ばぶさんの短い童話 その2 もういないよ(第3稿)
もういないよ
ぷるぷるぷる
ぷるぷるぷる
「はい、内野です。あーら、しばらく。
みなさんおかわりなくて?まあ、それはなにより。
ええ、うちもみんな元気よ。毎日子育て楽しんでいるわ。
何しろ遊び盛りのあそび名人ですもの、
いろいろやらかしてくれるわ。
二卵性双生児だから二倍手はかかるけど
そのぶん四倍は楽しませてくれているわ。
・・・ええ、勿論よ。いつでも遊びに来てよ。
電話ありがとう。じゃあね。」
ぴっ。
「またこんなに沢山おもちゃを出しっ放しにして・・・、
お食事にするから片づけなさい。」
スリッパをぱたぱた音させてママはキッチンに行きました。
「ブルルルン、ブルルルン、バオバオバオ」
「ブゥーブゥー ブブゥー」
昨日買ってもらったばかりの2台のミニカーは走ります。
黄色のダンプカーはなんてったって力持ち。
白いワゴン車はとってもおしゃれです。
「しゅうちゃん、まいちゃん。はやく、かたづけなさい。」
「ブルルルン、ブルルルン、バオバオバオ」
「ブゥーブゥー ブブゥー」
キッチンからママが歌うような声で言いました。
「♪か~たづけ なさぁ~あ~い♪」
「ブルルルン、ブルルルン、バオバオバオ」
「ブゥーブゥー ブブゥー」
ママはきゅっと口を結んでぷりぷり。もう歌っていません。
「さっきから何回も『かたづけなさい』っていっているでしょ。
ふ
たりともきこえないの?」
「ブルルルン、ブルルルン、バオバオバオ」
「ブゥーブゥー ブブゥー」
ぱぱっと素早くミニカーを取り上げると
ママは一言
「かたづけ!」
二人はしょぼん。
「ぼくどっかいっちゃうから、ぷんぷん」
青いバンダナを頭にさっとかぶりゴロリとふて寝。
まいちゃんもピンクのバンダナをかぶり、まねっこです。
「もういないよ。いないもんねーだ。」
二人は声を揃えて言いました。
「もういないよ。いなくなっちゃったよ。」
ママはくすっと小さく笑いました。
そして悲しそうな声でつぶやきました。
「あら、大変。私の大好きなしゅうちゃんとまいちゃんが、
いなくなっちゃったわ。さっきまでここにいたのに。変ねぇ。
いったいどこに行っちゃったのかしら? 探さなくっちゃ。
『しゅうちゃーん、まいちゃーん・・・』
もういっぺん呼んでみましょう。
『まいちゃーん、しゅうちゃーん・・・』
だめだわ、耳を済ましても返事がないわ。」
その時バンダナの中から
「くすっ」
と小さなちいさな笑い声。
「あら?今、何かきこえたかしら?
もういちど呼んでみましょう。
『まいちゃーん、しゅうちゃーん・・・』
「くくくく、く」
「あっ、あのこえは確かにまいちゃんとしゅうちゃんの声だわ、
でも大変。やっぱり二人の姿が見えないわ。
あら、こんなところに四本の足。
あっ、これはしゅうちゃんの足みたい。
はっ、こっちはまいちゃんの足によく似ている。
でもたいへん、二人が見えないわ。」
二人の足をこちょこちょしながらママはもう一度呼びました。
「しゅうちゃーん、まいちゃーん…」
「うふふふっふ。」
「あらっ、これはまいちゃんのおなかっぽい。
こっちはしゅうちゃんのおなかにそっくり。
でもやっぱり二人が見えないわ。」
ママは二人のおなかをぽんぽんぽこぽこたたきながら
「あ~らいい音。こんなにいい音のするおなかならやっぱり
しゅうちゃんとまいちゃんのおなかにまちがいないわ。」
「ぐふふふっふぅ」
「あらっ、これは絶対しゅうちゃんのおしり。
こっちはまいちゃんのおしり。うん、間違いないわ。
まぁ、なんてかわいいふたつのおしり。ぷりぷりぷり」
「だぁはははは。げたげたげた」
あんまりおおきな声で笑ったのでバンダナがパラリ。
「みーつけた。」
ママは二人のほっぺを指先でちょんちょん。
「こんなところにいたの。
どこにいっちゃったかしらってとっても心配しちゃった。」
「さっきからここにいたよ」
「ずぅーっとかくれていたのわからなかった?」
「うん、ちっとも判らなかった。さっき、ママが大きな声で
『しゅうちゃーん、まいちゃーん・・・』
って呼んだの聞こえなかった?」
「うん、ぜんぜん、きこえなかったよ。ねっまいちゃん。」
「うん、ちっともきこえなかったよ。」
「
さぁ、今日のお昼ご飯はサンドイッチよ。
三人で食べましょ。」
「うん、あたしもうおなかぺこぺこ」
「ぼくもはやくたべたい」
「おっとそのまえにこのお部屋ぜんぶきれいにかたづけたいな、
かたづけしましょか?」
「はーい」
あっというまにお部屋のなかはぴかぴかです。
~お・し・ま・い~