ワルグチエンザ

どんぽのばぶ

2014年05月25日 22:52

ある時、どうぶつ村の保育園で『悪口』が流行しました。 始めのうちはほんのちょっとのいたずら心や言葉遊びで面白がっていたのですが そのうち悪口はだんだんひどいものになって来ました。    『ワルグチエンザ』  だれかがいいました。 「かばさん、かばさん、おくちがでかいのね」 いわれてかばさんは どきっとしました。 そしてまわりのお友達をそっと見渡すと かばさんほど大きな口のお友達は誰一人としていません。 (わたしだけみんなとちがう) なんだかちょっぴり悲しくなりました。 すると、ちょっぴり涙が出ました。 「かばさん、かばさん、おくちがでかいのね」 「かばさん、かばさん、おくちがでかいのね」 何度も何度も言われているうちに とうとう我慢しきれなくなってかばさんは泣きだしました。 大きな声で泣きました。 くやしくなってかばさんは近くにいたさるくんにいいました。 「さるくん、さるくん、おしりがあかいのね」 いわれてさるくんは どきっとしました。 そしてまわりのお友達をそっと見渡すとさるくんみたいに おしりのあかいお友達は誰一人としていません。 (ぼくだけみんなとちがう) なんだかちょっぴり悲しくなりました。 すると、ちょっぴり涙が出ました。 「さるくん、さるくん、おしりがあかいのね」 「さるくん、さるくん、おしりがあかいのね」 泣きたいのを我慢していたさるくんでしたが みんなが何度も言うのでとうとう泣きだしました。 口惜しくなったサル君は近くにいたきりんくんと目が合うと 「きりんくん、きりんくん、おくびがなが~いのね」 いわれてきりんくんはどきっとしました。 そしてまわりのみんなをみると きりんくんほどながい首をしているお友達は一人もいません。 (ぼくだけみんなとちがう) なんだかちょっぴり悲しくなりました。 すると、ちょっぴり涙が出ました。 「きりんくん、きりんくん、おくびがなが~いのね」 「きりんくん、きりんくん、おくびがなが~いのね」 泣きたいのを我慢していたきりんくんでしたが みんなが何度も言うのでとうとう泣きだしました。             ※ 今ではもうみんなして悪口のいい合いです。 まるでインフルエンザのように大流行です。 「ねずみくん、ねずみくん、しっぽがひょろひょろね」 「わにさん、わにさん、せなかがいぼいぼね」 昨日まで風邪で保育園をお休みしていたぞうくんが すっかり元気になってやって来ました。 ぞうくんをみるとみんなはくちぐちに言いました。 「ぞうくん、ぞうくん、おはながなが~いのね」 いわれてぞうくんはきょとんとして、 「え?」 といいました。 みんなはもう一度声をそろえて大きな声で言いました。 「せーの、ぞうくん、ぞうくん、おはながなが~いのね」 するとぞうくんはこくびをかしげて 「はあぁ?」 っていいました。 みんなはさっきよりももっともーっと大きな声で言いました。 「ぞうくん、ぞうくん、おはながなが~いのね」 するとぞうくんはにっこりとほほえんでうなずくと 「うん、そうだよ。ぼくのだいすきなかあさんもながいんだよ」 このときみんなの心の中に電気がびびびびっと流れました。 「そうだ、ぼくもかあさんとおんなじだ」 「あたしも、おかあさんといっしょだ」 かばはくちがでっかいからかわいいんだ。 さるはおしりがあかいからかっこいいいんだ。 きりんはくびがながいからすてきなんだ。 それ以来みんなはお互いの悪口を言うのをやめました。                         ~お・し・ま・い~

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