12の短短童話 その8 「どっかいっちゃうから」
どっかいっちゃうから
「はぁ~あ」
クレパスの赤色のクレちゃんはちぃちゃなため息をつきました。
「パナ~ァ。パナ~。
もう、まったくぅ。
パナッシュったらまた僕をそのままにして。
ちゃんと戻してくんないとどっかいっちゃうでしょ。
もとのお家にかえしてよぉ。
もう、どっかいっちゃうから。ぷんぷん。」
あら、こんなところにパナのクレパスが…。
クレちゃん、そんなところでしょぼんとしてどうしたの?
判ったわ、パナに出しっ放しにされたのね。
ほんとにもう、しょうがない子ね。
パナ~ァ。パナ~ったら。パァーナーア。
あっ、そうか、さっきヤーリーと公園で遊んでくるって言ってたっけ。
ちゃんと片付けないとどっかいっちゃうでしょ。
ね、クレちゃん。やれやれ。」
お部屋のお掃除の途中だったママの携帯電話が鳴りました。
パナッシュのママはクレちゃんをエプロンのポケットに入れました。
「はいもしもし。
あら、もうそんな時間?
解ったわ、今すぐ出ます。ええ、5分以内に着くわ。
じゃあまたあとで。」
ママは慌ててエプロンを外すと全自動洗濯機の中にポイ。
スイッチポン。じょばぁ~~。うぃんうぃん、ぴっ。ぐるんぐるん。
エプロンの中のクレちゃんは一緒にお洗濯されてしまいました。
かちっ。ぷしゅ。ごぼごぼ。ぎゅるるるんるん。ぐぅぃーいん。
かちゃ。「ぴーぴーぴー。」
用事を済ましてママが帰ってきました。
洗濯物を干しているとパナッシュが公園から帰ってきました。
「おばちゃんこんにちは」
「あら、ヤーリーも来てくれたの。一緒におやつ食べてらっしゃいな。」
二人はおやつを食べ終わると、大きな紙に怪獣の絵をかきました。
パナッシュは紫の怪獣を描いています。
ヤーリーは青色の怪獣です。あっという間に描きあげました。
「ぼくのかいじゅうすごいんだよ。はなのあなからけむりふくんだぞ」
灰色のクレパスでもくもくと煙を描きました。
「がおー。ぼくのなんかかっこいいんだぞ。
くちからひをふくすごいやつなんだぞ。
あれ?あかいろがない。さっきはあったのに。
ママー、ぼくのあかのクレパスみなかった?」
「見たわよ。なんだか真っ赤になってぷんぷん怒っていたわよ。」
「どこいっちゃった?」
「あら、どこやっちゃったかしら、え~~と?」
「あかー、あかー」
パナッシュが口に手を当てて呼びました。
洗濯竿に干されたエプロンの中でくすっと笑ったのだーれだ?
~お・し・まい~
※12回連続、それぞれ独立した短編です。
「もっと・みじっかいばぶさん童話」です。名づけて
『短短童話』今回はその8回目どうぞよろしく。
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