だいさくせんのてがみ
どうぶつ村の保育園の年長さんのクラスで、爆発的に「こま回し」がはやったある日のこと。
『大作戦の手紙』
いつものようにみんなでわいわい輪になって「こま対決」をしています。
その輪の後ろから首をながあくしてキリン君が覗き込んでいます。
「どうしたんだいキリン君。一緒にこま回ししようよ」
「うぅん。でもさぁきつねくん」
「こままわしやりたくないの?」
きつね君は首をかしげて訊きました。
「やりたいんだけどさ・・・ぼくのこまさぁ・・・」
「こまがないのかい?」
とあらいぐまくんがききました。
「こまはあるんだけどさぁ」
「わかった。こまがこわれちゃったんでしょ」
丸いおなかをぽんと叩いてたぬき君が言いました。
「こわれてなんかいないよ」
「だったらいっしょにやろうよ」
とロバ君も言いました。
「やりたいんだけどさぁ、ぼくのこまここにないんだよ。
ぼくのおうちにあるんだよ」
次の日のそのまた次の日の次の日です。
今日もみんなでワイワイガヤガヤ輪になって「こま対決」に夢中です。
キリン君がその輪の後ろから首をながあくして覗き込んでいます。
「キリン君も一緒にやろうよ。」
ときつね君がいいました。
「こま回ししたいんだけどさ、
僕のこまおうちにあるんだよ。」
「きのうも、おとといも、その前の日もそう言っていたね。
どうしてもってこないの?」
きつね君は首をかしげて訊きました。
「それがさぁ、あしたはもっていこう あしたはもっていこうって
おもっていても、おもっていてもぼくって、
おうちにかえるとわすれちゃうんだよ。」
その時です。
縞リス君が大きな眼をくりくりきらきらさせながらいいました。
「いいことおもいついた。ねえ、きりんくん。
おうちにかえったら、よるのうちに、
あしたほいくえんにきていくふくのポケットに
こまとひもをいれておけばいいんだよ。」
「でもさぁ・・・」
「じぶんでじゅんびとかやんないの?」
「いつもママがじゅんびしちゃうから
ぼくまたわすれちゃうかもしんない。」
「そうか、だめかぁ、いぃーいかんがえだとおもったんだけどなぁ」
縞リス君はとっても残念そうに言いました。
「ほかになにかいいほうほうはないかなぁ」
「そうだ、このかみあげるからこれにわすれないように
てがみをかいておいたらいいや。
きつねくんはじがとくいだからかいてくれるかい」
ロバ君が耳をプルプルってさせていいました
「いいよ。でも、なんてかくんだい」
そこでみんなはいろいろな言葉を考えて、考えて、考えました。
そして暫くすると素敵な言葉がまとまりました。
きつね君がその言葉の全部の文字を一つ一つ丁寧に書きあげました。
「かけたぁ!」
きつね君は両手で手紙を頭の上に掲げました。
一生懸命書いたのできつね君の手のひらはすっかり汗びっしょりです。
みんなはその手紙の文章を声を揃えて読みました。
『キリンくんが あしたこまをもってくるのを
わすれないだいさくせん・・・
きょう、うちにかえったら、
いろんなことするまえに、
いちばんすぐに、
カバンのなかにこまとひもをいれる、さくせん』
「これならあんしん。あんしん」キリン君は嬉しそうに
手紙をポケットに入れるとみんなに握手しました。
「よかったねキリンくん、
これであしたはいっしょにこまたいけつできるね。」
次の日です。昨日よりももっとにぎやかにこま対決が始まりました。
きつね君、あらいぐま君、たぬき君、ロバ君、縞リス君それに、
もちろんキリン君も一緒です。
「たぬきくん、ちょっとこまかして」
たぬき君がいいよともいわないうちに
ヘラジカ君はたぬき君のコマを横取りして回しました。
たぬき君のこまが止まると
「きつねくん、ちょっとこまかりてもいいでしょ」
とヘラジカ君はきつね君がいいよともいわないうちに
こまをとりあげて回してしまいました。
きつね君のこまが止まると
「しまリスくん、ちょっと・・・」
「やだよ、ぼくのコマだからつかわないで」
「けちんぼ、いいじゃないかちょっとくらいかしてくれたって」
「ヘラジカくんはじぶんのこまをつかえばいいじゃないか」
と縞リス君はシッポをぶりぶり回しながら言いました。
「だってないんだもん」
「なくしちゃったのかい?」
「あるけど、ないんだもん」
「それってどういういみ?」
「うちにはあるけど、ここにはないんだもん」
「もってくればいいのに」
「もってこようとおもっても、わすれちゃうんだから、しょうがないでしょ」
ヘラジカ君は鼻の穴を大きく広げて言いました。
それを聴くとみんなは一斉に大きな声で言いました。
「だいさくせんのてがみ!」
「なぁーにそれ?」
ヘラジカ君は眉毛をぴくぴくさせて聴きました。
「てがみをかいたらいいんだよ」
「だってぼくじよめるけど、かけないもん」
「ぼくのかみをあげるよ」
「ぼくがえんぴつでかいてあげるよ」
ロバ君が紙をくれました。きつね君が字を書きました。
手紙の文章をみんなが声をそろえて言いました。
『ヘラジカくんが あしたこまをもってくるのを
わすれないだいさくせん・・・
きょう、うちにかえったら、いろんなことするまえに、
いちばんすぐに、カバンのなかにこまとひもをいれる、さくせん』
「だいじょうぶかなぁ」 とヘラジカ君。
「ぜったいだいじょうぶ」とキリン君がニコニコ言いました。
~お・し・ま・い~
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