ばぶさんの短い童話  その3 でんわですよ

   でんわですよ
ぷるぷるぷるぷる
「あっ、でんわですよ。」
「ほんとだ。はい、もしもし、ぼくしゅうちゃんです」
がちゃっ・つーつーつー
「あれ、きれちゃった。」
ぷるぷるぷるぷる
「はい、もしもし、しゅうちゃんです。」
がちゃっ・つーつーつー
「まいちゃん、またきれちゃった。」
「へんなでんわね。」
「ほんと、へんなでんわ。」
ぷるぷるぷるぷる
「あっ、またでんわよ。」
「まいちゃん、どうしようか?」
「やっぱりでたほうがいいんじゃないの」
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
「でもさぁ」
ぷるぷるぷるぷる
「もしもし、ぼくしゅうちゃんです」
「もしもし、わたしはだれでしょう?」
「さあ、わかりません。あなたはだれですか?」
「・・・じつはわたしにもわたしがだれだかわからないんです。」
「さあ、こまりましたねぇ。」
「ええ、こまっているんですわたし。
それででんわしてみたんですけど。」
「そうですか。・・・ちょっとまってください。」
「しゅうちゃん、だれからのでんわなの?」
「まいちゃん、それがね、じぶんでもわからないんだって」
「いたずらでんわじゃないの?」
「もしもし、いたずらでんわですか?」
「とんでもありません。いたずらでんわなんかじゃありません。」
「しゅうちゃん、なんていってる?」
「いたずらでんわなんかじゃないっていってる。」
「ちょっと、でんわわたしにかわってくれる?」
「うん、いいよ。はい」
「もしもしー、わたしはまいちゃんよ。あなたはだれですか?」
「じつはわたしにもわたしがだれだかわからないんです。
わたしはいったいだれでしょう?」
「わかった、これって、クイズのでんわでしょう。」
クイズってなんですか?」
「あなた、クイズしらないの?」
「よくしりません」
「じゃあさ、『まーるくってちっちゃくってあかいものなーんだ?』
とかいうの」
「はいはいはい、わかりました。こたえは『イチゴ』でーす。」
「ぴん・ぽーん。『いちご』せいかい。じゃあねぇ『あかくってねー』・・・」
「はいはいはい、『リンゴ』でーす。」
「ぶっぶー。もんだいはさいごまできいてください。
あかくてね、しかくくてね、う~う~う~ていってね。
すぴーどだしてはしっていくぅ…」
「はいはいはい、『しょうぼうじどうしゃ』でーす。」
「ぴん・ぽーん、だいせいかい、
こたえは『しょうぼうじどうしゃ』そのとおり」
「わーい、やったぁ、やったぁ。ばいばい。」
ガチャリ、つーつーつー。
「でんわ、きれちゃった。へんなの。」
「へんなでんわ」
ぷるぷるぷるぷる
「あっ、またでんわよ。」
「ねぇ、どうしようか?」
「こんどはわたしがでてもいい?」
「うん、いいよ。まいちゃんどうぞ。」
「あら、おとがとまっちゃったわ」
ぷるぷるぷるぷる つん。
「あっ、またなっている。」
ぷるぷるぷるぷる つん。
「おとがまたとまっちゃったわ」
「ねぇ、まいちゃん。こんどなったらどうしようか?」
「すぐにでんわにでないでようすをみましょう。」
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
「はい、もしもし、ぼくしゅうちゃんです。」
「あのぉ~~」
「あっ、さっきのわたしはだれでしょうのひとだ。」
「ぴん・ぽーん。わたしはだれでしょうのわたしです。」
「それでだれだかわかったんですか?」
「はーい。わたしはだれだかわかりました。ありがとうございました。
あのね、ぽかぽかあたたかなはるになって、めがさめて、
ほらあなからでて、おがわのみずでかおをあらおうとしたらね・・・」
「ちょっと、ちょっと、しゅうちゃん。
わたしにもでんわのおはなしいっしょにきかせてよ。」
しゅうちゃんとまいちゃんはほっぺたをくっつけて電話の声を聴きました。
「おがわのみずにじぶんのかおがうつっていたんです。
まっくろでね、けむくじゃらでね、それからねぇ・・・」
「わかったぁ。あなたはくまさんでしょう。」
しゅうちゃんとまいちゃんは声をそろえて言いました。
「ぴーんぽーん。わたしはくまさんでーす。」

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