はぶらしぶらぶら
しゃかしゃかしゃかしゃか いい音です。
いつものようにさっさと食べ終えたおおちゃんは
流しの真ん中の蛇口で食後の歯ブラシをしています。
しゃかしゃかしゃかしゃか やっています。
そこへいっちーとうーたんが歯ブラシをしに来ました。
二人はおおちゃんの使っている水道の
右隣りの蛇口をめぐって場所争いです。
「ぼくいちばん」
いっちーはなんでも一番が好きなのです。
「ちがうもん。ぼくのほうがいちばん。」
うーたんはとっても負けず嫌いです。
特にいっちーが『一番宣言』をすると
にわかに対抗意識がめらめらと燃え出すようです。
流しには蛇口が3個あるのですから喧嘩しないでもよさそうなものなのですが、
ほとんど毎日のように喧嘩になります。
そこへえいちゃんもごはんを食べ終えて
歯ブラシをしにやってきました。
えいちゃんはおおちゃんの使っている水道の
左隣の蛇口で歯ブラシを始めました。
始めたかと思ったらちゃかちゃかちゃっと
もう
「おーしーまい」ですって。
それをきいておおちゃんも
「ぼくも、おーしーまい」
次によっちゃんとあっくんが歯ブラシをしに来ました。
よっちゃんは真ん中の蛇口で歯ブラシしゃかしゃか。
いい音です。
あっくんたら左端の蛇口で歯ブラシを
もぐもぐがじがじ始めました。
変な音です。
そのうち歯ブラシがポロリと口から飛び出しました。
拾い上げたあっくんの歯ブラシ、
おととい新しく買い換えてもらった歯ブラシなのに
すっかりタワシのようです。
右隣りの蛇口ではまだ場所争いが続いています。
「ぼくいちばん」
いっちーはなんてったって一番が好きなのです。
「ちがうもん。ぼくのほうがいちばん。」
うーたんはなんてったって負けず嫌いです。
ご飯のお替りを2回して満足のしーちゃんが来ました。
「よっちゃん いーれーて」
「いーいーよっ」
しーちゃんとよっちゃんは真ん中の蛇口を二人で使います。
しゃかしゃかしゃかしゃか「はい、おしまい」
右隣りの蛇口のではあいかわらずいっちーとうーたんが
「ぼくいちばん」
「ちがうもん。ぼくのほうがいちばん。」
お互い蛇口のコックにしがみつき歯ブラシそっちのけです。
お部屋の方から馬場ちゃんが呼びました。
「おーい、紙芝居始まるよ。」
なんと、まあ。
いっちーもうーたんも歯ブラシしないで
いっちゃいました。いいのかなぁ?
~お・し・まい~
※12回連続、それぞれ独立した短編です。
「もっと・みじっかいばぶさん童話」です。名づけて『短短童話』今回はその10回目どうぞよろしく。