12の短短童話  その4 「コロコロのきせつ」

コロコロのきせつ  
ついこの前、先月のことです。
「あはははは」
ころころころころよく笑います。
「なにがそんなに面白いの?」
「だってたぁー、ぼくがおいかけると、ほら。ねぇ。
にげていくんだもん。まてぇー。」
本当です。赤いボールがコロコロ コロコロ 転がっていきます。
「あはははは」
「がんばれ、がんばれ、つかまえちゃえ」
「あはははは」
「急げ急げ」
「だってたぁー。あはははは。」
「そんなに笑っていないで、もっと急げ。」
「あはははは、だって、ぼくがおいかけないと、
ころころとまっちゃうんだもん。
ほらね。とまっちゃったでしょ。まてぇ~~え」
ほんと不思議なふしぎなボールです。
ボールが自分でころころ転がっていくのか、それとも、
せいちゃんの心がボールをころころ前へ押し出しているのか、
いったいどっちが本当なのでしょう?。
「あはははは。まてぇ~~。ぼーる、まてぇ~~。」
ほんと不思議なせいちゃんです。
いったいボールを捕まえたいのか捕まえたくないのか解りません。
答えはそのどちらでもあり、どちらでもないようです。
その証拠に、今日のお庭のせいちゃんを見てください。
先週パパがお友達の家からもらってきた仔犬とかけっこです。
仔犬の名前は『トワラ』といいます。
せいちゃんが自分で考えて、『トワラ』に決まりました。
「あはははは」
ころころころころよく笑います。
「なにがそんなに面白いの?」
「だってたぁー、ぼくがおいかけると、ほら。ねぇ。
トワラがにげていくんだもん。まてぇー。」
トワラはころころとよく走ります。
「あはははは、だって、ぼくがおいかけないと、
トワラがとまっちゃうんだもん。
ほらね。とまっちゃったでしょ。まてぇ~~え、トワラ」
せいちゃんは今、走るの大好きなんです。
走らずにはいられないのです。
仔犬のトワラも走るの大好きなんです。
おんなじです。
だからせいちゃんとトワラは走っているのです。
「あはははは、トワラ~。まてまてぇ~」
おや?、せいちゃんがトワラを捕まえました。
トワラは赤い舌を出してハアハアしています。
「ママ―。おみずちょうだい。のどかわいた。
ぼくのコップとトワラのおさらと、ふたっつちょうだい。」
「ごくごくごく。おいしいね、トワラ。あっ、トワラまてまてー。」
二人はまたころころ走り出しました。                                          
~お・し・まい~
※前前々回から12回連続「もっとみじっかいばぶさん童話」です。
どれも独立した短い童話です。
名づけて『短短童話』今回はその4回目どうぞよろしく。
 


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